[アメリカ・ポーランド発] 最近は黒髪がブームなんて言われるけれど、街を歩けば茶髪が目立つ。本当のところはどうなのよと思って検索したら、
Yahoo!知恵袋 に同じ質問をした人がいた。
今の流行は黒髪?茶髪?
これに対しベストアンサーに選ばれた回答は、
茶髪が流行かな? 流行ってほどでもないけど茶髪が当たり前みたいな。髪も明るければ顔の印象も明るくなるような。服にも合わせやすいし。 茶髪は基本誰でも似合いますが、黒髪は似合う人と似合わない人にわかれるので‥。 黒髪は重いので、顔が薄かったりして黒髪負けだとクール、暗い印象になって、彫りが深かい人はめちゃくちゃ似合うんです。たぶん。 たぶん何年後も黒髪は少数派でないですかね?
というわけで、茶髪に軍配が上がっている。回答者は髪と顔のコントラストについて、さりげなく、それでいてかなり鋭い意見を述べているが、筆者はこれを読んで「髪は顔の額縁説」を思い出した。この説を唱えているのは『
Dienekes' Anthropology Blog (ディエネケスの人類学ブログ)』のオーサー、ディエネケス氏*。彼は遺伝学が専門のようで、記事もそれ関連が多いが、人類学関連のネタを取り上げたりもしている。
*名前を含めプロフィール等いっさい公開されていないので、ブログのタイトルにちなみ、ここでは便宜上オーサーをこう呼ぶことにする。 以下にそのポイントをまとめたが、彼はこの仮説を使い、なぜ北欧に金髪が多いのか謎解きをしているのだ。いきなり、話題が日本女性の髪から欧米女性のそれに飛んでしまうが、ヘアダイがシャンプー並みに身近な存在となってしまった日本女性(男性も)にもヒントになる情報がちりばめられていると思うので、興味のある方は読み進んで頂きたい。
髪は顔の額縁説 ディエネケス氏は周囲の女性を観察することによってこの仮説を思いついたそうだ。彼の観察によると、不美人は髪を染める時、明るい色を選ぶ傾向があるのに対し、美人は、地毛が濃い色だと、わざわざ髪を染めたりはせず、地毛が金髪でも、やはり染めないか、染めるとしても濃い色を選ぶ傾向があるという。(ブログはアメリカ発信と思われるので、観察対象はアメリカ人女性か?)
さて、彼は自説の中で、頭髪は絵画の額縁のようなものだとしている。額縁は大概濃い色をしているが、これは絵画を周囲から切り離し、そこに人々の注目を集めるため。これを人に置き換えると、顔は絵画で髪は額縁となるわけだ。
従って、美女にとり黒髪はその美しさを引き立ててくれる道具となるが、そうでない女性の場合、顔から人の注意をそらせるために、髪の色は明るいほうがよい。(そういえば、ハリウッドの大女優、エリザベス・テイラーはずっと黒髪で通しているが、彼女は額縁効果のことをよく知っているのかもしれない)
黒髪は男らしさをアピールする 一方、男性の場合、黒髪が好まれる傾向が強いが、それは男らしさをアピールできるからだそうだ。例えば、高く突出した鼻は女性にとっては望ましくない特徴だが、男性にとっては好ましく、黒髪とのコントラストでそれを強調することができる。
また、男性は女性ほど髪を染めたりしないが、これは大概の男性が髪を短く切るため、ヘアの額縁効果が薄いからだそうだ。また、男性がヘアダイを使ったりして容貌を変えるのはタブー視されてきたことも背景にあるらしい。
『Domino Dancing』by West End Girls 北欧に金髪が多いワケ なぜ北欧に金髪が多いのか? ここまで読めば、ピンと来る読者もいることと思うが、答えは顔のマズさをカバーするためだという。ブロンド=ゴージャスというイメージがあるからか、にわかには信じがたい話であるが、先に進めよう。
農耕が始まり人類が定住するようになったのは、新石器時代が到来した頃(8500BC)だが、ディエネケス氏によるとこの生活様式の変化は人の骨格を優美な形へと進化させていったそうである。北欧系の人々が南欧系に比べ一般的に背が高く骨張った体付きをしているのは、ユーラシア大陸北部と肥沃な三日月地帯及びその隣接地域間で定住開始時期にズレがあり、北欧系の骨格の進化が遅れたせいだと彼は述べている。
南欧系の女性が洗練された顔立ちをしているのに対し、北欧系の女性が一般的に「よりきつい」顔立ちをしているのも、このためだそうだ。
ここで、彼の頭髪額縁説を当てはめてみると、男性的で「きつい」顔立ちの北欧女性は、人の注意を顔からそらす効果がある金髪が有利となるし、南欧女性はその洗練された顔立ちを強調するための額縁として黒髪が有利となる。
顔面形態の変化と共にヘアの色素形成も同時期に起こったらしいのだが、実際、南欧には黒髪が北欧には金髪が多い。彼の仮説が予測する通りなのである。
金髪が威力を発揮するのは30代 以上、ディエネケス氏の謎解きについて書いたが、彼の仮説と矛盾しないばかりか、金髪のごまかし能力には年齢制限があることを示唆する実験結果がポーランドの学者により発表されているので、それにも少し触れておこう。(『Perceptual and Motor Skills』<2008年6月出版、第106巻第3号、737-44ページ>)
ヴロツワフ大学、心理学研究所の博士課程院生、P・ソロコフスキー氏は、男性が金髪女性を好む現象を研究するため、年齢18-46歳のポーランド人男性360人を対象に、次のような実験を行った。実験に使われたのは、20、30、40歳の3人の女性の写真で、それぞれヘアカラーを金髪、茶髪、黒髪に加工したもの。
彼はこれら合計9枚の写真を被験者の男性たちに見せ、それぞれの魅力度を9段階評価させた。その結果、金髪は女性の年を若く見せる効果があることが分かったという。また、女性の魅力度については、金髪での写真が茶髪や黒髪に比べ著しく高く男性に評価されたのは30歳の女性のみだったそうだ。
この実験結果から、金髪は女性の容貌が加齢で衰えだす30歳頃からその威力を発揮するが、その効果も40歳頃になり容貌がさらに劣化すると消えてしまうことがわかる。
さらに、彼は500にのぼるネット広告を分析してもいるが、それからは年増の女性ほど、より頻繁に髪をブロンドに染めることが判明したそうだ。
日本人と茶髪 ディエネケス氏の仮説やソロコフスキー氏の実験結果を読むと、髪は太古の昔から顔の額縁として機能してきたものなんだと納得させられる。白人種にあれだけヘアカラーにバリエーションがあるのも、原動力に女性達の峻烈な男性獲得競争があったからということだろうか。
日本人は基本的にヘアカラーはブルネット(黒から濃い焦げ茶)で、ほとんどバリエーションがない。けれども、15年ぐらい前から化粧品会社が競って売り込みをかけ、それに消費者が乗ったおかげでヘアダイが普及し、バリエーションが人工的に作り出された。男性にしろ女性にしろ、おしゃれの一部として髪を染めているのだろうが、やはりその根底には、本人が意識している・いないに拘らず、異性にモテたいという欲求があるのだろう。
さて、筆者は両氏の研究成果を日本人にあてはめてみたのだが、以下のような結果となった。
美人は髪を染めるな もち肌が自慢の女性も髪を染めるな 顔に注目されたくない女性は、染めるのなら明るい色がベター (ダークブラウン系だとそれほど効果が期待できない) 40+の女性は染めても甲斐なし 男性は黒髪で攻めよう ヘアダイには発癌性物質が入っているし、抜け毛や頭皮のたるみを招いてしまうので、本音を言うと、これほどのリスクを補っても余りあるメリットがある人はほとんど存在しないのではないかと思っている。
もちろん、ヘアダイには白髪染めの用途もあるが、これも「髪は顔の額縁説」の切り口で見てみると、白髪の捉え方がネガティブからポジティブへ180°転換する。なぜなら、白髪は額縁の色をシルバーに変えることで、老いた容貌から人の注意をそらしてくれる、天然の若返り術と考えられるからだ。
ソース:
On the evolution of blondness Attractiveness of blonde women in evolutionary perspective: Studies with two Polish samples.