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シリアルキラーの出現率は西高東低(米研究)

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[アメリカ発] 先般、米ラッドフォード大学シリアルキラー情報センターのデータ要約に、筆者自ら補足を加え分析したものを当ブログで公開したが(参照)、今回は連続殺人事件が他国に比べダントツに多いアメリカ合衆国に的を絞り、地理的側面からそのトレンドを探ってみることにする。

データはキム・ロスモ博士著『Geographic Profiling』から抽出した。著者は、カナダのバンクーバー市警に勤める現役の刑事である。なお、この本は和訳され『地理的プロファイリング』というタイトルで出版されてもいる。


Geographic Profiling地理的プロファイリング―凶悪犯罪者に迫る行動科学


同データは米FBIが作成したもので、1880-1992年の期間アクティブだった世界各国の男女シリアルキラー211人及び14件の未解決事件を含む。だが、その大部分(192人と13件)はアメリカ関連だ。各シリアルキラーが主にどの州で殺しを繰り返したかも明記されている。

FBIはシリアルキラーの定義を「3件以上の殺人事件を犯し、その1件と1件との間に感情的冷却期間のあるもの」としている。従って、上記センターのデータと違い、2件の殺人事件を犯し、3件目を犯す前に逮捕された者は含まれていない。

以下の表は、1970-92年の期間アクティブだった男性シリアルキラー155人及びその犠牲者たちの州別分布を示したものだ。表からは両者の分布にかなりの偏りがあるのが分かる。

男性シリアルキラー155人の地理的分布、1970-1992年
番号州名シリアルキラー犠牲者人口*
人口1千人口1千
万人当り万人当り
出現率出現率
(人)(%)(人)(人)(%)(人)(千人)
0アメリカ合衆国155100.06.82,158100.095.3226,546
1アラバマ31.97.7211.053.93,894
2アラスカ31.974.7381.8945.6402
3アリゾナ21.37.4341.6125.12,718
4アーカンソー00.00.000.00.02,286
5カリフォルニア4227.117.759327.5250.623,668
6コロラド63.920.8914.2314.92,890
7コネチカット21.36.4110.535.43,108
8デラウェア10.616.850.284.1594
9ワシントンD.C.00.00.000.00.0638
10フロリダ127.712.31235.7126.29,746
11ジョージア53.29.2512.493.45,463
12ハワイ00.00.000.00.0965
13アイダホ10.610.630.131.8944
14イリノイ74.56.11366.3119.011,427
15インディアナ10.61.870.312.75,490
16アイオワ00.00.000.00.02,914
17カンザス21.38.590.438.12,364
18ケンタッキー00.00.000.00.03,661
19ルイジアナ21.34.8190.945.24,206
20メイン00.00.000.00.01,125
21メリーランド21.34.7100.523.74,217
22マサチューセッツ10.61.790.415.75,737
23ミシガン21.32.21075.0115.59,262
24ミネソタ21.34.980.419.64,076
25ミシシッピ10.64.070.327.82,521
26ミズーリ00.00.000.00.04,917
27モンタナ31.938.1351.6444.9787
28ネブラスカ10.66.430.119.11,570
29ネバダ10.612.5351.6437.2800
30ニューハンプシャー00.00.000.00.0921
31ニュージャージー00.00.000.00.07,365
32ニューメキシコ00.00.000.00.01,303
33ニューヨーク117.16.31989.2112.817,558
34ノースカロライナ10.61.7160.727.25,882
35ノースダコタ00.00.000.00.0653
36オハイオ53.24.61125.2103.710,798
37オクラホマ31.99.9231.176.03,025
38オレゴン31.911.4211.079.82,633
39ペンシルバニア42.63.4401.933.711,864
40ロードアイランド21.321.170.373.9947
41サウスカロライナ21.36.41064.9339.53,122
42サウスダコタ10.614.530.143.4691
43テネシー00.00.000.00.04,591
44テキサス95.86.31607.4112.414,229
45ユタ31.920.5150.7102.71,461
46バーモント00.00.000.00.0511
47バージニア31.95.6140.626.25,347
48ワシントン42.69.7663.1159.74,132
49ウェストバージニア00.00.000.00.01,950
50ウィスコンシン21.34.3221.046.84,706
51ワイオミング00.00.000.00.0470
出典:『Geographic Profiling』p. 245-50、Table A.1より算出。
*1980年国勢調査。データは米国国勢調査局の『The 2008 Statistical Abstract』から引用。


最多のシリアルキラーが出没したのはカリフォルニア(42人)で、2位のフロリダ(12人)、3位のニューヨーク(11人)を大きくリードしている。また、この上位3州には殺人鬼の42%が集中している。その一方で、シリアルキラーが出没していない州も全部で15(ワシントンD.C.含む)ある。彼等の餌食となった犠牲者2,158人の州別分布にもほぼ同様のパターンが見られる。

しかし、各州の人口にも格差があり、最大のカリフォルニア(23,668千人)から最小のアラスカ(402千人)まで、その差は大きい(1980年国勢調査)。従って、シリアルキラーの頭数そのものを比べても余り意味がないと言える。そこで、人口差の影響を取り除くため、単位人口(1千万人)当りのシリアルキラー出現率を算出してみた。

結果は表の通りで、トップ3はアラスカ(74.7人)、モンタナ(38.1人)、ロードアイランド(21.1人)と顔ぶれが入れ替わる。下の図は、出現率を地図上で比較したものだ。国土の西半分に出現率の高い州が集中しているのが分かる。(期間や性別の制限をつけず、全シリアルキラー192人のデータでも、州別出現率は同じ傾向を示すが、以下で取り上げる小論文で使われるデータとの一貫性を保つため、ここでは155人のデータ分析のみを表示した)


男性シリアルキラーの州別出現率、1970-1992年

出典:表より作図。
注):ワシントンD.C.は省略されている。

男性シリアルキラーの州別出現率、1970-1992年


では、なぜシリアルキラーの出現率は西高東低なのであろうか? この疑問に対する答えは米コネチカット大学のジェイムズ・デフロンゾ社会学名誉教授らが執筆した小論文「Male Serial Homicide」(『Homicide Studies』2007年2月出版、第11巻第1号、3-14ページ)の中にある。

教授らは連続殺人犯の出現率が州により違うのは、文化的、社会構造的要因がその背景にあるからという仮説を立て、1970-92年の期間アクティブだった男性シリアルキラー151人のデータ(上記FBIデータ)を使いそれを検証している(ポアソン回帰分析、オフセット変数=州人口の対数、擬似決定係数=.872)。

その結果、社会構造的要因として、都市人口の割合、離婚者の割合、単身世帯の割合が高い州ほどシリアルキラーの出現率が高いことが分かったという。これらの割合が高いと、加害者にとっては社会的孤立、被害者にとっては脆弱性が増し、犯罪が発生しやすくなるというわけだ。

また、文化的要因として、殺人犯に対する死刑の執行率が高い州ほど連続殺人が起こりやすいことも判明している。合法的な暴力(死刑)は違った形の暴力を誘発するという仮説があるが、このスタディはそれを裏付けているようだ。

以上であるが、出現率の州間格差を説明するこれら要因は、アメリカでなぜ連続殺人事件が多発するのかヒントを与えてくれてもいる。高度に都市化し匿名性の高い社会で独り住いをする人々で溢れる同国は、シリアルキラーに世界でも有数の猟場を提供しているということだ。

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