[アメリカ発] 現在、日本には自分の部屋・自宅にずっと引きこもる、いわゆる「ひきこもり」と呼ばれる人々が推定160万人以上いるといわれる。稀に外出する程度の準ひきこもりを含めると、その数は300万人以上にもなるそうである(NHK福祉ネットワークに拠る)。
ひきこもりの多くは社会から隔離されることによる孤独感や焦燥感に押しつぶされそうになりながらも、そこから抜け出せない状態が長期に続いているわけだが、長引く孤独感は免疫系を遺伝子レベルで蝕み、重病になる危険性を高めるという研究報告がカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の医学部研究チームにより9月13日、『
Genome Biology』誌上で発表された。
では、どのようにして孤独感は人の健康を損なうのだろうか? スティーブン・コール助教授率いる同研究チームは、
長期にわたる社会的孤立は通常の免疫反応を機能不全に陥れる生物学的連鎖反応を引き起こすと見ている。
この連鎖反応は、他人は信用できず、我が身を脅かす存在だと見る人生観から始まるそうである。(このような人生観を持ってしまうと、当然ながら、人とのつきあいは重荷になる)
この人生観は人体(副腎皮質)に向けて、コルチゾールというストレス・ホルモンを分泌するよう合図を送る。健全な免疫系の場合、コルチゾールは遺伝子の一群に体の炎症反応を中断するようキュー(合図)を送る役目を持っている。
ところが、孤独感のため長期間ストレスを抱えていたり悩んでいる人の場合、この過程が変えられてしまうという。
炎症とは何か? 真正細菌、真菌、原生生物、ウイルスなどが体内に侵入すると、免疫系が応答して、発赤、熱感、腫脹、疼痛、機能障害などの徴候が出現するが、これを総称して炎症と呼ぶ。低レベルの炎症は、免疫系が稼働しており、軽度あるいは本人が気づかない程度の脅威に反応しているということであり、ほとんどの人に取って正常なことである。
しかしながら、高レベルの炎症は厄介だ。例えば、膠原病(こうげんびょう)のような自己免疫疾患の場合、免疫系が人体の正常な細胞や組織に対してまで過剰に反応し攻撃を加えるので炎症の度合いが高まる。また、炎症は癌も含めた多くの重病とも関係している。
孤独な人々は、先にも述べたように人間不信の人生観の影響により、やや高めのコルチゾールを分泌しているのだが、それにもかかわらず、一貫して他の人々よりも
炎症のレベルが高いことを同研究チームは発見している。
これは、絶えずコルチゾールが流れてくるために、レセプターが適切に対応しないのが原因と見られている。「朝から晩までシグナルを受け続けると、レセプターは耳を傾けなくなるのです。本質的に、免疫系がコルチゾールはでたらめを言っていると見なしているようなものです」とコール助教授は説明する。
同研究チームは、長期にわたり孤独感を持って生きる人々は、バクテリアやウイルスのような病原体を捕まえる役割を持つ
抗体の産生量が少ないことも発見した。また、これらの人々の
抗ウイルス応答も低いことがわかっている。つまり、ウイルスを攻撃することにかかわっている一群の遺伝子がそれほど機能していないということである。
このように、孤独な人々の体内では、免疫系の危険を伴う部分は行き過ぎているのに対し、健康を防御する部分は頑張りが足りていないというわけだ。実際、人が長期にわたり孤独感を抱えると、心臓疾患を引き起こし、循環系全体が圧迫され、風邪等のウィルスを撃退する機能も削がれてしまうことが、これまでの研究でわかっている。
ただし、この健康問題は孤独感を抱えて引きこもる人々のみに当てはまらない。世の中には、たとえ多くの友人に囲まれていても、自分は孤独だと感じている人がいるものだ。そういう人々は人との付き合いにストレスを感じ悩んでいる。その一方で、友人の数が少なくても、孤独と感じない人々もいる。肝心なのは、友人の数ではなく、本人が孤独感に苛まれているかどうかであり、前者も多くのひきこもり同様、免疫系の機能不全に陥る危険があるということだ。
なお、この研究レポートは、全文
ココから閲覧又はDLできる。
ソース:
Genes get lonely too
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- 2007-09-18 00:46
- 健康
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